今回ですが、面白い時計をご紹介します。今は亡き日本の時計ブランドGSXから発売されていたグランドコンプリケーションウォッチです。
グランドコンプリケーションウォッチといえば、少し前にシェルマンのグランドンプリケーションを紹介しました。しかし、GSX社製のグランドコンプリケーションにはおそらく世界初のあるものが搭載されているのです。
【GSX】航空回転計算尺付きのグランドコンプリケーションを紹介
さてさて、今回紹介しようというのはまたしてもグランドコンプリケーションウォッチです。
一般人には手が届かない雲上の存在だったグランドコンプリケーションウォッチも、シェルマンがシチズンと共に値段を下げたことで大衆にもなんとか手を出せる価格となりました。
私が普段会社で使用している時計が2つあります。ひとつが前にブログで紹介したG-SHOCK。そしてもうひとつがこのシェルマンのグランドコンプリケーション。 それぞれ全く方向性の異なる時計ですが、この2つの時計を主に出社時に着用しています[…]
グランドコンプリケーションウォッチのパイオニア、シェルマンについては前の記事を読んでいただくとして、このGSX製のものの何がすごいかというとデザインと“航空回転計算尺”が付いたところなのです。
かつて日本にあった腕時計ブランドGSXとは?
GSXより
GSXというと、正直私が真っ先に思いつくのはスズキのバイクです。時計のGSXの認知度が低いのはそれもそのはず、実はすでにないブランドだからです。
創業は1995年のこと。国内デザイン、国産ムーブメント、国内組立、国内で職人が一本一本丹念に
生産するという「メイド・イン・ジャパン」の時計作りをしていました。そんなGSXは2020年7月に幕を下ろし、商品は中古でしか購入できない状態に。素晴らしいものづくりをしていたブランドですので、中には値段が販売時よりも上がっているモデルすらあります。
※まだHPは生きていますので上記より閲覧することが可能です。
GSX BOLLARD グランドコンプリケーション
そんなレアなGSX ボラードグランドコンプリケーション。
GSX BOLLARD グランドコンプリケーションのスペック
GSXより
ブランド | GSX |
名前 | BOLLARD GSX1999SBK |
時計の種類 | クォーツ |
ムーブメント | ETA2824-2 |
素材 | 316Lソリッドステンレススティール |
サイズ | 43.7mm |
厚さ | 15.50mm |
製造年 | 1999年 |
機能 |
永久カレンダー |
念の為に復習、“グランドコンプリケーション”とは?
腕時計には複雑機構と呼ばれるものがいくつかあります。代表的なのが下の6つの機構。
名称 |
機能(シェルマンHPより引用) |
Minute Repeater |
2種類の異なった鐘の音で分単位まで現時刻を知らせる機能。知りたいときにいつでもその時刻を音にするため、大変高度な技術を要します。 |
Perpetual Calendar パーペチュアルカレンダー |
4年に一度の閏年まで自動的に修正して表示する機能。通常のカレンダーは月が変わるごとに自分で修正しなくてはなりませんが、この時計が動いている間は一切その必要がありません。 |
Moon phase ムーンフェイズ |
29日と半日という月の周期を文字盤上の月が再現し、現実の月と同じ満ち欠けを表示。天体の動きが密接に生活に関わっていた文化のなかから生まれた機構と伝えられています。 |
Split Seconds Chronograph スプリットセコンドクロノグラフ |
ストップウォッチ機能のついた“クロノグラフ”の進化形。通常は一度止めれば終了する計測が、これは途中経過の計測が可能。一度の計測でいくつもの記録をとることができます。 |
この機構のうち3つ以上をひとつの時計の中に詰め込んだものをグランドコンプリケーションウォッチと呼びます。
これをアンダー20万という価格で実現させたのが日本のブランドシェルマンによるシェルマングランドコンプリケーションでした(ムーブメントはシチズンが手がけた。さすがCITIZEN)。
GSX BOLLARD グランドコンプリケーションの特徴
GSXのグランドコンプリケーションも流れ的にはシェルマン系列です。同型のムーブメントを搭載しています。
しかし、シェルマングランドコンプリケーションの対極を行くようなデザイン、そしてなんでついているのかわからない航空回転計算尺という似ても似つかない一本となりました。
シェルマンとGSXのグランドコンプリケーションを比べて
シェルマンとGSXのグランドコンプリケーションを並べました。
綺麗な曲面と鏡面が多いシェルマンに比べ、エッジが立ちソリッドに仕上げられたGSXと性格の違いは見ればすぐにわかります。
厚みについてもシェルマンと比較すると分厚いです。バンドも太くソリッドで重く腕に乗せるとシェルマンの倍以上重いのではないかと感じます。それがいいんですがね。
実はGSXの公式HPでと重さについては触れられており、意図して重量を感じる重さとしたそうです。確かに私のようにしっかりと腕時計をしていると実感できる重さのものが好きな人間にとってはたまりません。下手な機械式時計より重いです。
意外とワイシャツにも似合うと思っているんですが、ビジネスはシェルマンでプライベートはGSXと贅沢なグランドコンプリケーションウォッチの使い分けができています。
GSX BOLLARD グランドコンプリケーションの気に入っているポイントについて
1人のユーザーとしてGSXボラードグランドコンプリケーションの気に入っているポイントをお伝えします。
グランドコンプリケーションウォッチに絶対に必要ない機能が搭載されている点
ここで航空回転計算尺の話題です。そもそも航空回転計算尺についてどんなものか、皆さんはご存知でしょうか。
有名どころでいうとブライトリングの時計に採用されていることが多い機構ですが、航空回転計算尺とはベゼルを改善させベゼルの外側と内側の数値を読み取ることで掛け算や割り算ができるものです。
腕時計の歴史と戦争の歴史は関わりが強く、腕時計は作戦開始のための時間を知るものであり、砲弾を撃つ際の距離を測るものであり、航空回転計算尺は残りの燃料の量を知るためのものでした。
一方グランドコンプリケーションウォッチはというと、ムーンフェイズやミニッツリピーターなど腕時計にどれだけの情報を、複雑な機能を詰め込めるかというミリタリーとは全く異なる方向性で進化しか分野です。
宝石のたなかより
だけれども考えてみてください。回転航空計算尺なんて現代では誰が使うでしょう。ブライトリングのナビタイマーであっても、回転航空計算尺は機能ではなくデザインの一部としての側面が強いでしょう。
グランドコンプリケーションウォッチの機能は時間を知るという時計本来の意味でいえばほとんどが意味のない機能です。そして回転式航空計算尺も現代では無用の長物です。それが共存しているのが面白く、気に入っているポイントなのです。
無骨なデザインと見た目通りの重さ
また回転航空計算尺に触れますが、私がこの機能を使うことはありません。大抵は暗算でいいですし、もっと複雑な計算はスマホを使ったほうが正確だからです。しかし、デザインとしての回転航空計算尺は気に入っています。無骨なデザインによく合うからです。
無骨で飾り気のない部品が多いので、回転航空計算尺がよく映えます。そしてその見た目通りの重量感がたまりません。どれぐらい重いか想像いただくのは写真からは難しいですが、足に落としたら悶絶するのが想像できるくらいには重いです。
ウォッチフェイスに注目しがちだが、ベルトも秀逸
時計の文字盤には3つのディスクとムーンフェイスの覗き窓がひとつ。ギョーシェなどはなくモノクロで平坦なイメージです。ケースにとても合っていると思います。写真で質感を撮るのが難しいのが難点ですが。
また、この時計ベルトも秀逸です。というのもベルトが厚いのです。横の幅ではありません、縦の幅がです。多分これが時計全体の重量増に繋がっているのだと思いますが、これでプロレスをしても壊れないんじゃないかくらいのがっしり感があります(グランドコンプリケーションは精密機械の集まりなので、多分中身が無事で済まない)。
服の上からも着用できるようにとベルトにはサイズ調整機能があったり、ギミックもしっかりしています。このベルトもなかなかお気に入りのポイント。
GSX BOLLARDは究極の“ムダ”グランドコンプリケーションウォッチである
今回のGSX ボラードグランドコンプリケーションの総括です。この記事を書いて、GSXのグランドコンプリケーションを私が好きな理由には2つのベクトルがあることがわかりました。
ひとつはシェルマングランドコンプリケーションとのギャップ。同じグランドコンプリケーションでありながらまるで対極にあるような存在なのが面白いです。
そしてシェルマンのグランドコンプリケーション以上に無駄な機能が詰まっているところ。GSXのグランドコンプリケーションに関しては使い道のある無駄な機能の集大成みたいな時計になっています。この無駄に豪華で無駄な機能をもった時計が腕に乗っているのがたまりません。